番外編(白い巨塔批判)
昔日誌で書いていた「今週の白巨」の再録です。
10月25日(土) 財前先生の講義風景があります。たくさんの白衣を着た学生(?)、医師(?)に手術の講義をしています。 通常大学のあのような臨床講義は5年生か6年生で行われると考えられますが、一般にはクラスの学生のみが対象で、 ほかの科の医師などは普通入れません。教授が退官する時の最終講義はまさにあのような雰囲気ですが、ちょっと 違和感ありましたね。 白衣は診療の時に着るもので授業の時には着ません。すごくシワが寄りますし、ばい菌が付いているかも知れないので汚いです。 教授の権威とは何でしょうか。医学部の教授は国立の場合は国家公務員であり、給与もその基準に準じて支払われます。 よく言われることに教授などに手術をしてもらうと百万単位の謝礼がいるという伝説があります。 昔、私が研修医のころ、主治医(執刀医ではない)をしていて患者さんのおばあちゃんにそっと白衣のポケットに 包みをもらったことがあります。研修医はアルバイトなしではやっていけないくらい貧乏なので、一応お断りしつつも 内心は少し嬉しく、小走りに医局に帰って開けてみたところ「おまんじゅう1個」だったという事もありましたねえ。 10月27日(月) もう一つ「白い巨塔」の話です。 国立病院の医師は国家公務員ですので、アルバイトは出来ません。従ってどこかの病院に手術に行ってアルバイト料をもらう訳にもいかず、 結局は自分の給料はほとんど家に入れることなく自分で使っていることになるのでしょう。公務員医療職で一番等級が高くても 60万円くらいが限度ですので、助教授クラスだと40ないし50万円の給料と考えて良いでしょう。 前に「振り返れば奴がいる」という織田裕二主演の医学ドラマがありましたが、手術室なんかのリアリティーでは「白い..」がずっと上です。 10月31日(金) 財前先生、食道がんの手術中、助手が血管を損傷して冷や汗をかきます。 教授選でお金が舞い散るかどうかは知らないとして、手術中の描写はなかなかに良く出来ています。糸結びの手元などは、もし俳優さんが行ったとすれば 相当練習したに違いありません。 まず、財前先生が手術室に入ってくると看護師が手袋をしてくれます。手袋は自分ではめることが多いですが、施設によっては看護師さんがやってくれますので、 良しです。その後感染防止用の眼鏡まで掛けさせてもらってましたが、なぜ自分で掛けなかったのでしょうか。眼鏡は不潔(外科用語で滅菌してないこと) なので、手洗いする前に掛ければよいし、助手たちはみんな自分で掛けています。その証拠に助手たちは眼鏡が汗でずり下がらないようにテープで眼鏡を 止めています。まさかここまでは看護師さんもやってくれません。怒られます。 術中かなり出血したようです。それにしては術衣に血があまり飛んでいないですね。映像のリアルさよりグロさを抑えたのだろうと思いますが、 手袋も術衣も結構きれいでしたね。 11月7日(金) さて、今週は手術シーンがなく、つっこみにくいのですが、一つ二つ。 まず、里見先生、病理に抗癌剤の感受性試験を頼みに行ったのですが、まず病理学教室に直接行ってはいけません。 伝票ださないと、伝票。 このクラスになると、患者を直接受け持つことはなく、若い医師が担当します。夜、急患で運ばれた東教授夫人の診察までしていますが、浪速大学は人手不足なんでしょうか。 ただ、VIPの患者さん、退院の時財前先生に執刀してもらったことをすごく喜んでいましたが、術中単純なミスで自分が死にかけたことは知らないのでしょうか。 大学ぐるみで隠蔽したのでしょうか。開胸になっていますので、傷が不自然に大きいのに気が付くと思いますが、うまく言い逃れたのか、それを知っても感謝する度量の大きい患者さんだったかです。 11月14日(金) 今週も手術シーンというより教授選の駆け引きと末期患者がどうしたこうした、ばかりでした。 財前先生、手術が終わって11時からの教授選考会議があっているころ、病院を抜け出して瞳ちゃんの所で良かことをしでかしています。 いくらなんでもそれはないでしょう。この日の助教授は昼からは手術も外来もなく暇にしていたのかも知れませんが、うちの助教授でさえ、そこまで大胆なことは 出来ません。急に呼び出されでもしたら間に合うのでしょうか?途中で中断もつらかろうし。 ほーらやっぱ電話かかったでしょ。急患でも来たら体力もちませんよ。 食堂で看護婦さんと内科、外科の若い医師がよく一緒にご飯たべてますよね。まずあり得ません。 私も国立病院で勤務の頃はお昼ご飯は食堂で食べるか、ナースの休憩室に買ったお弁当を持って乱入して食べていました。 11月21日(金) 手術の前にわざわざ術式を言ったり、「今から○○静脈を結紮する」とか普通は言わないですね。恥ずかしいし。 全国公募というのも珍しいことではないのですが、普通は助教授、講師クラスが他の大学の教授選に立候補し、昇格して就任するのが普通です。 もし、自教室の教授がスタコラサッサと他の大学に行ってしまうとなると残される医局員は大混乱して「俺らは一体どうすればええねん?」てな具合に急に関西弁になったりします。。 東教授が推薦する石川大学の 菊川教授は弱冠41歳。石川大学においてもせいぜい数年前に教授になったばっかりじゃないでしょうか。(30代の医学部教授というのは あまり見たことがありませんが) 菊川先生、退官までは25年もありますので、首尾良く東先生の計画通り浪速大学の教授になったとしても、すぐ東大教授を狙って辞めちゃう可能性もありますので、 要注意です。 クラブ「アラジン」(ここばっかりしか行きませんねえ。少し違う店も開拓しましょう。)で黒木瞳ママが「年代物のワインでも開けましょ。」と言って 値段も言わずに1988年のブルゴーニュを開けます。いくら、なあなあの間柄でもお金の面はきちんとしておかないと亀裂が入ります。10万円でも惜しくないと東先生が言っていたので、 それより安いとしてもクラブ価格では相当なお値段でしょう。瞳ちゃんの好きなワインはシャトーマルゴーじゃなかったっけ? こちとら2000円のヌーボーで喜んでいるのにい。 11月28日(金) 白い巨塔、教授選挙も佳境に入り、いよいよ物語の重要人物、佐々木庸平も登場して緊迫した展開になってきました。 さて、大学病院の外来というのは普通一つの科に複数の診察室があって曜日によって担当する医師が決まっています。 たとえば教授診察は毎週火曜日の第1診察室で行われ、第2や第3診察室では講師とか助手とかいった先生が平行して診察していると言った具合です。 メジャー(外科や内科など)の科では患者も医師も多いため、たくさんの診察室を持っているのが普通です。 さて、佐々木庸平は初診のはずですので、通常どの先生の診察室に回されるかは不明なのですが、 里見先生が受付嬢に一言口添えをしたのか助教授診察となっています。しかも当日食道の内視鏡とバイオプシーまで施行していました。 まあ、もしかしたら、その日は助教授の診察日でなく、外来から呼び出されて特別に内視鏡をしたのかも知れませんが、さらっと流しても良い部分に 深〜くつっこむのが本コーナーの趣旨ですので、ご了承ください。 内視鏡で診た感じ、食道癌なのですが、バイオプシー(生検)をして組織検査で確定診断となります。 12月6日(土) 文化系ドラマの様相となってきましたのでつっこみ所少ないです。 12月12日(金) さて、いよいよ財前先生、教授選に勝ち、来年には教授の椅子に座ることになりました。 さて、佐々木庸平の手術です。 1月9日(金) 長らくお待たせ致しました。白塔コーナーです。新年になって第二部が始まりました。長いだけにつっこみ所満載ですが、全部は書けないのが残念です。 晴れて教授となった財前先生、国際学会での講演とライブの手術を引き受けます。医師免許は国際免許ではないので、外国での医療行為というのはかなり制限されます。医師として留学していても他の国では研究が主となり、実際の医療行為は、その国の医師免許がなければできないのが普通です。財前先生がアメリカかどこかの医師免許を持っているとしたら可能であるかもしれませんが不明です。 このようなケースの場合、医師免許の制限がどうなのかも良くは知りませんが、こういったライブに外国から招かれ難しい手術をするとしたら、やはり相当に名誉なことではあるでしょう。(原作にはありません) 招待講演などはよくある話ですが、自分の講演のスライドくらいは自分で用意しなさい。飛行機に乗る直前に渡されても不安でしょう。確認してみないと。変な内容だったら恥をかきますよ。 私のもといた教室の助教授は北海道の学会にスライドを忘れて、教室員に飛行機で届けさせたことがあるという豪快というかオマヌケで憎めないお方でした。 まあそれはそうと、その外国の患者は良く承知しましたよねえ。見ず知らずの医師に診せるの。しかも術中診断が誤っていたとか言って術式まで変更だあ。何やってんだか。インフォームドコンセント、どっかに飛んでけ〜〜。 壮行会がまたいけません。国際学会に出るくらいでいちいち医学部長まで来て壮行会をやっていたのでは年中壮行会だらけです。国立病院なんだから予算縮小しなさい。 また、壮行会の最中に患者の容態が変わりますが、このような場合でもよっぽどのことがなければ教授が直接見に行くことはないと思います。(主治医、指導医がしっかりしていれば)。この佐々木庸平の場合、いかにも医師と患者の信頼関係が出来ていなく、また故意に患者側の敵意を煽るような振る舞いが多すぎ、これでは訴えられても仕方ありません。今はやりのドクハラにあたるかもしれません。 内科の里見先生もCTを撮ることばかりしか言いません。診断も大事ですが、現時点での呼吸不全を何とかするのが先決ではないでしょうか。泣いてる暇があったら髪の毛も切りなさい。助教授なんだからあ。 財前先生の自信も良いのですが、患者にもしものことがあったら責任問題になるのはわかると思います。四の五の言わず「佐々木庸平が急変です」とか「危篤です」とか言えば我が身かわいさに必ず病棟に飛んで帰るはずです。 まあ、この辺は小説ですので割り引くとしても、実際にこれほど患者-医師の信頼関係が確立してない手術は考えられません。実際の医療現場ではもう少し安心して良いと思います(願います)。 財前先生、教授になったは良いけれど助教授を含め、若い教室員の教育をしっかりしなければいけません。自分の言うことだけは良く聞くイエスマンではなく臨機応変な対応を取れる医師を育てないと、しょっちゅう電話がかかったり、若いのが来たりしておちおち飲みにも行けませんよ。 1月16日(金) 佐々木庸平が癌性リンパ管症による呼吸不全で死に至ります。(癌性リンパ管症とは癌細胞が肺のリンパ管に詰まった状態のことです) 柳原医師(新米の担当医)は教授の言うことを聞いて抗生剤の投与を続けますが、肺炎ではないので効きません。種類を換えて投与を試みますが、効きません。誰かに言われなくても他の治療を試みるか、早い段階で検査を行うべきでしょう。財前教授が帰国して、この医師を「馬鹿の一つ覚えのように抗生剤を投与するばかりではなく、状況が変わったら臨機応変に対処しろ」と叱責しますが、まさにその通りです。教授は執刀はしましたが、術後の管理は担当医をはじめとするスタッフがきちんと行うべきです。いくら教授が言ったとしても、患者が亡くなっては自分も窮地に追い込まれるのは明らかです。助教授も講師も研修医もこんな状態なら財前先生も先が思いやられます。 里見先生も、のこのこ庸平の葬儀にお出かけですが、自分だけよい子になろうとしてはいけません。ご遺族の感情を逆撫でするだけでご供養にはなりません。ここは財前先生を売ってでも自分は裁判沙汰にならぬよう工作でもした方が得策では。 1月23日(金) おいおい、それはないでしょう。カルテの改竄にもほどがあります。カルテの記載事項を訂正するときは、必ず二本線で消して書き直します。修正液を使うなんてことは考えられません。だって誰が見たって改竄でしょうに。本気で改竄するんならページ丸ごと変えなきゃねえ。 病院側の弁護士も弁護士です。今どき稚拙な手段でカルテの改竄を指示する弁護士がいたら会ってみたいものです。しかも日本弁護士会の副会長の事務所の人だそうです。また正義の味方の弁護士はイケメンの貧乏人、悪の手先はエリート風というステレオタイプの配役はいかがなものでしょうか。 いくらデフォルメしていると言っても、こんな時代錯誤の大馬鹿医者や馬鹿弁護士が出てくるドラマ(面白いんですよ、私的には)を世間は一体どのように受け取っているのでしょうか。「ふむふむ、やっぱ大学病院の医者は権威を盾にした悪い奴ばっかりだのー。カルテまで書き直したりして。。。」って思っているのでしょうか。それとも「まさかいくら何でもこんなことはドラマの中だけでしょ。」と思っているのでしょうか。 事実はその中間なのです(それも怖い)。 1月30日(金) いよいよ舞台が法廷に移ってきました。1回目、2回目の証人尋問でまず、佃医局長と大河内先生が出廷します。医局長と教授ではちょっと格違いで佃先生がかわいそうです。原作では大河内先生はたしか財前教授の手術は完璧であったことにも言及したと思いますが、記憶違いかもしれません。ただ、転移があれば必ず手術以外を第一選択とするという言い方は若干誤解を招くのではないでしょうか。いつか製薬会社の女性社員が末期癌で苦しんでいる時はとにかく元病巣の減量手術をということも言っていましたね。 また、佃医局長にしても柳原きのこ医師にしても、何しろ被告側の証人に迫力がありません。弁護士は優秀と言うことですので、もう少し事前に予定質問のリハーサルをするとかしとかないと勝つ裁判にもみすみす負けてしまいます。本っ当、財前教授も医局の人材の不足には泣かされますね。また、この弁護士さん、原告側の証人、里見先生の自宅まで行って出ないように言いますが、これは法的には良いことなのでしょうか。後で明るみに出ると相当やばいような気がしますが。 読者の方から「財前先生の白衣はアイロンがぴしっと掛かっているのに里見先生のはしわしわなのはなぜでしょう?あの奥さんならきちんとアイロンくらい掛けそうなのに。。」というご質問です。 国立病院の場合、白衣も国からの支給品です。ただ、1年に2着ほどの支給ですので、汚れたら洗濯に出してその間はもう片方を着るという生活です。そうすると1週間くらいは同じ白衣を着ることになり不潔っぽいですね。ですからちょっとおしゃれな医師は自前で何着か白衣(Kansai Yamamotoのとか)を持っていて、これを着回します。クリーニングも医局のボックスに入れれば勝手にやってくれますのでわざわざ自宅に持ち帰ることもありません(血とか付いていれば汚いし)。あまり汚らしい白衣を着ていることは患者さんに対しても失礼だし、ベッドフリーの研究者ならともかく、あまりお行儀は良くありません。里見先生の白衣はシワがよっているだけで不潔ではなさそうですので白衣の素材が違う(綿か何か)のでしょう。最近のはシワも寄りにくく出来ています。 いずれにせよ里見先生は学究肌で着るモノなどには頓着しないというイメージを出すための演出でしょうが、髪の毛とかは長いんだし顔もせっかく江頭2:50に似ているんだから、この人の方がこじゃれた白衣が似合うのではないでしょうか。黒のタイツと。 蛇足ですが聴診器も家に持って帰らないでほしい。どんな感染症の患者の診察をしたかわからない診察器具はなるべく持ち帰らない。大事な一人息子やくねくね奥さんにうつるよ。自宅用に聴診器の一つくらい、けちけちしないで買いなさい。 2月6日(金) 法廷モノっていうのは大好きでいろいろ読むのですが、今回のは法廷モノにしてはひねりみたいなものが少ない気がします。もう一つ紅会というような前時代的奥様集団があり、「大学を守りましょう!」なーんて言っている脳天気な大学があったらもう一回入学してみたいですが、まあ、それも良しとしましょう。 財前先生の手術の腕の良さを際だたせるために後腹膜腫瘍の患者さんを持ち出してきました。ちょっと気になったのがまたまた里見先生のひとことです。「癌なんでしょうか?」「いえ、癌ではなく肉腫だろうと思います。」 待ちたま〜えっ。素人相手にそんなこと言ってはだめでしょう。先生。上皮性の悪性腫瘍を癌と言い、非上皮性の悪性腫瘍を肉腫と言います。ですから、言っていることに間違いはないのですが、いかにも悪性度が少ないように言いくるめてませんか?それから臆面もなく財前先生に頼むのはもうおやめ。見てると頼むばっかで自分はちっとも頼みを聞かないですよねえ。君は財前先生を同級生と思って気軽に頼むばっかしですが、少しくらいは恩に報いるということもしなければいかんでしょう。 ごるあ〜、金井助教授、何してるの?術中の出血ごときであわてるんじゃない。だいたい教授をしっかりバックアップしなければいけない講師以上のクラスのスタッフが前から言っているように頼り無さ過ぎ。昨日今日出来た医局ならスタッフもそろって無いでしょうが、伝統ある浪速大学でしょ。頑張ってよ。 里見先生、自分が大事な証人尋問に出る日くらい遅刻してはいけないでしょう。そんなことだからついにくねくね奥さんも切れたでしょ。悩むくらいなら最初から安請け合いをしない。 法廷では財前先生の証言のほうが迫力があって良かったですね。ただ術前に転移を疑ったものがいてもいいんです。それを承知で手術したという方がよっぽど心強い感じです。ウソがウソの上塗りをしてにっちもさっちもいかなくなるケースがあります。 教授、最近の古賀潤一郎さんの関連記事を熟読して参考にして下さい。ふられた瞳ちゃんに未練があるのもいただけません。 誰でもありません。 2月13日(金) 早いですねえ、結審。鑑定人の唐木教授の鑑定一発で決定ですね。原作ではもう少し捻って財前教授に不利な要素なども取り混ぜながらようやく逆転勝訴という感じに持って行っていたような記憶がありますが、やはり2クールでは時間が足りないのでしょう。 しかし、これではこの社会派ドラマの意味が多少薄まるような気がしますが如何でしょうか。こう簡単に原告敗訴では、やっぱりそうか、という感覚が残るのみで患者良い人、医者悪い人の昔からの構図に何ら変わるところがありません。せっかくのリメークですので、もう少し現代に即した仕上がりにして頂きたかったのものです。まあ、今後の展開に期待しましょう。 しかし、裁判も早いが里見先生の退職も早けりゃ、家庭の修復も早い。財前先生も瞳ちゃんとの仲直りも早いねえ。アウシュビッツとかは一体何だったんでしょうか。瞳ちゃん途中降板か?とかいろいろ詮索した割には意味わからんでした。 こらー、里見い。いくら自分が気がないったって大衆食堂に教授令嬢を連れて行くなって。気がないのをそれほどまでに露骨に表現できるとは。ストレートにもほどがあります。私でももうちょっとこじゃれた店に連れて行きます。おまけに傘まで借りて帰る始末です。佐枝子さん、大盛りカレーを注文した時点で気が付きなさい。ずーっと待ってたんでしょ。雨の中(しくしく)。 よ〜く考えよ〜♪お金も大事だよ〜♪ 2月20日(金) どんどん原作から遠ざかってしまってコメントしづらいです。 里見先生ついに首になってアパートを出ます。優しい財前先生が現れ高度がん治療センターが竣工した暁には里見先生を迎えたいとまで言ってくれました。素直に受けなさいよ。裁判では不利な証言をしたにもかかわらずこんな良い話を持ってきて下さっているんです。 弁護士の関口先生も大変ですね。栄養状態が悪いらしいです、今時。着手金200万円では1年はもたんでしょう。佐枝子さんのバイト料も払わなければいけませんし。 どうでも良いことでしょうけど、五郎、花森ケイ子、亀山君子、又一、よし江、禎蔵などの名前ですが、原作をあれだけいじっているんですから多少現代風に換えても良かったのかなあ。ちょっぴり昔風ですよねえ。悪い名前ではないのですが、ハイテク感が若干少ないですよね。 と言うことで今週は手抜きして見てましたので、あまりつっこめませんでした。 2月27日(土) 医師は基本的には診療に手を抜くことはありません。医師性善説のように聞こえるかもしれませんが、患者を救いたい、病気を治したいと思ったら一見無駄のように見える検査まで行いたいのが本音です。検査漬け、薬漬けなどという言葉に表されるように医療費の無駄遣いを助長する検査、投薬は厳に慎むべきですが、もう一つ検査をしなかったばかりに悪い結果を招いたという事例も少なくないのも事実です。 お祭りで買った綿飴の割り箸が喉に刺さって救急外来に受診、ろくな検査もせずに帰して、その晩亡くなったという悲惨な事故がありました。 しかしまあ、こんなことを考えても財前先生は強気ですよねえ。いくら前教授の回診日に手術を合わせるためとは言っても自分で疑問があれば医師ならば再検査をしたはずです。このドラマを見ていると財前先生は能力の限りを尽くして頑張ったんだとしか思えません。人が何を言おうとも自分は常識として炎症性変化としかとらえられなかったのだから仕方ありません。何かアドバイスする人がいても変な意見を言う常識外の人と思っていたような節さえあります。 何度も言うようですが、この裁判の争点は誤診とか精査云々の問題ではなく、術後の処置と患者さんとのコミュニケーションの問題です。つまり、財前先生を責めるのなら、有能な人材(自分で判断して行動できる人間)を育てていないことを責めるべきです。本当はこれって前教授が悪いんですけどね。 そんなことより今日はちょっぴり冗長な白い巨塔の内容なんかよりもっと重要と言うか驚くべきニュースがありましたよねえ。そうです。宗教法人「釈○会」のことです(今日のニュースの宗教法人「オウム真理教」は別格ですよ)。 財前教授夫人、何と実は教祖夫人になっていました。お相手の会長は100キロとも150キロとも言われるスキンヘッドの教祖様です。白巨は結婚ラッシュで、くねくね奥様も代議士夫人となったばかりで驚いていましたが、その比ではありません。 しかし、どうして教祖様というのはみんな一様に怪しげ(失敬、他意はありません)な感じが漂っているのでしょうか。それをオーラとかカリスマ性とか言うのかもしれませんが、教授夫人もやっちゃいましたって感じです。記者会見も多少宗教がかっていて興味深く拝見しましたが、如何だったでしょうか。 おーし、比較してみましょう。
あちゃー、勝ってないじゃん。一個も(悲)。 3月5日(金) 原作との違いには驚きますが、まあ、置いておくとして。 それはそうと里見先生は相当な悪ですなあ。だって、前の教授の東先生を法廷にと弁護士に進言したの張本人は自分のくせに結局は佐枝子などに責任を押しつけているようにしか見えません。 3月12日(金) 裁判の行方、カンファレンスの議事録や看護師の看護記録で決着といった様相でしたね。国立病院では病棟のカンファの議事録とか取るのでしょうか。少なくとも私の所属した病院ではなかったことです。術前カンファは受持医が病歴、経過から手術計画などをプレゼンし、他の医師からも評価してもらう場です。もちろんこのときには教授も出席しており、あーじゃ、こーじゃ言います。自分の症例のことで頭は一杯ですので、医師が議事録まで取るとは思えません。事務の人や看護師が取るというのも考えにくく(公務員は自分の職務外のことは基本的に行いません)、普通はないことのように思います。 通常、術前に医師が患者に術式その他をお話するときは看護師も同席することは多いです。しかし、この場合も記録は何時に医師がだいたいこのような話しを誰にしたというくらいの記録で、「柳原先生がCTを前に言葉につまる」とかの細かな描写はあり得ません。 いずれにせよ、今時「助かりたいなら手術しかありません」などと言う医師がいないというのがこのドラマの決定的に現実離れした所なのです。「訴えられたくないので助からないかもしれませんが手術以外でも好きな方法を選んでくださって結構ですよお」というのが本音かもしれません。 多少見方が偏っているのかもしれませんが、このドラマの中では終始一貫、里見先生の態度に疑問を感じます。 またいざ裁判になると、今度は敵方です。でないと自分が犯した過ちまでつつき出されます。あまつさえ前教授の東先生まで法廷に引っ張り出し、ひいては職を失わせる結果も招いています。里見先生も職を失ったではないかと言いますが、確かに研究施設は整ってなくてもしっかりした市中病院みたいです。また国立大学の助教授などに比べると多分2倍以上(月収100万は下らないでしょう)の給料に増収したでしょう。 佐々木庸平が内科を受診した時点で手術手術と考えるあまり肺野の陰影を見落とし、また外科への転科を急いだことが、この事件の発端と考えられないでしょうか。良い医師然とした里見先生に比べ、確かに財前先生は人間的には多少横柄なところがあり、自信過剰ではあります。しかし立派な技術を持ち、今までに大勢の患者さんを助けてきているのも事実です。今回はインフォームドコンセントがきちんとなされなかったことが最大の原因ではありますが、このように医師の善し悪しを単に横着とか自信過剰とかお金持ちとか顔が嫌いとかで裁く風潮もいただけません。 3月19日(金) さて、いよいよ最終回でした。 ちょうど古巣の教授の退官と重なり、我が医局と対比するのですが、うちの医局は浪速大学に比べるとずっとのんびりしています。もちろん助教授は教授になるべく着々と準備をしているのでしょうが、あんまりどろどろとした雰囲気は伝わってきません(本人の本当のところは知りませんが)。 おっと、関係ない話しでした。白い巨塔というちょっと時代がかった小説を現代に置き換えてドラマ化した意欲には敬服します。医学ドラマというのは我々から見ると、とかくお笑いの対象になるのですが、私の目から見ると良くできたドラマだと思います。2クールしかありませんので長大な原作の雰囲気をすべて表現するには短すぎましたが、大河ドラマのように冗長過ぎず、かえって良かったのかもしれません。 また、このようなドラマが出来るのを期待します。 3月27日(土) 特別編は総集編と、その後のエピソードっていうやつでしたね。第一外科には何かぱっとしないアクのない教授が座っていますしがんセンターも市役所風で、死んだ財前先生の無念さがあんまり伝わってくるものがなかったですね。 癌の告知なんぞ、したくもないしされたくもないでしょうが、癌を扱う医師にとっては避けて通れないことです。患者と医師の間に人間としての信頼感があれば告知は淡々と行われます。あまりウエットな感じでもいけませんしドライでも勿論いけません。 私もがんセンターにいたときは数多くの患者さんに癌を告知してきました。殆どの患者さんが私の2倍も生きておられる人生の先輩です。若輩の医師(私)ごときが生死を諭すなどということが出来るわけもありません。ましてや本人の人生だし医師は神様でもありません。神様でない若い医師ごときが患者の生命の長さや重さを量ったり調節するなどは許されるわけもありません。 事実をありのままに伝え、医師が出来る治療、選択肢、予後をお話するだけです。勿論、勇気づけたりはするのですが、何しろ年上の先輩諸氏です。自分だったら、どこの馬の骨ともわからん若造のに命の話しなんぞされるのはいやでしょ。 私の患者さんは当時60代前半。定年をひかえたお父さんです。 このようなケースで医師は一体何を偉そうに言えるでしょうか。しかし、それが医師の仕事です。癌を治しても人を救ってないかも知れません。そのときは大先輩の患者さんの人生観に合わせて自分の考えを淡々と述べること以外に出来ることはありません。 だから多分私たちは癌の患者さんの治療をしながら、すごく多くの医療以外のことを学んで来たんだろうと思います。 |