ドクターMの回想録
6.海の匂い 昔々大学生だった頃、よく授業をさぼって海に行っていました。 医学部の授業って言うのは単位性ではなく、すべて必修ですので高校と同じように朝から夕方までずーっと拘束されます。ですから時間があって遊びに行くのではなく、授業をさぼらないと遊べない訳です。 そのころ九州ではウインドサーフィンが出始めの時期で、私の友人の親父さんが博多で第一艇目を購入しました。そのボードをみんなで借りてウインドサーフィンを始め、はまって行きました。自分のボードを持つようになっても、そのころのゲレンデには数えるはどしかウインドはいなくて、一日の長で我々が一番格好良く風に乗っていたんです。 朝の1時間目の出席だけ取り、あとの講義は代返を頼んで出発です。駐車場にはボードを積んだ車を停めてあります。 さて、そこまでして行った海ですが、ウインドサーフィンは風がないことには話になりません。風がなければ浜辺でカセット(CDじゃないですよ)を聞きながら缶ビールを飲んで風を待ちます。 記憶というのは不思議なものです。脳のどこかに書き込まれた記憶が、遠い時間を経ても何かのスイッチによっていきなり表に出てきます。 やっぱ、あのとき授業をさぼって海に行って良かったです。授業のことなど何一つ覚えていないですが、海の匂いは決して忘れることはないでしょう。 |