R60/2


彼女は凛として佇んでいた。
少し年代を感じさせる、つやのある黒のドレスには華やかさこそないが、その気品に満ちた立ち姿に、これ以上ないと言うほど似合っていた。対照的な純白のピンストライプに縁取られたその生地は黒と言うより墨を思わせる深い深い群青だったかもしれない。

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そのドレッシーな姿はこうして白日の下に視るより、むしろ黄昏の淡い光の中の方が一層引き立つだろう。艶々とした肌触り、一部のすきもないスタイルにはどんなに地味に装っていても目を奪われない者はいない。そして誰もが知らず知らず彼女を極上の風景の中に置きたいと願うに違いない。
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繊細だが、かといって細すぎずグラマラスな部分をも併せ持つボディーラインはあまりにもセクシーだが、知性というヴェールでその魅力を隠しているようにさえ見える。ドレッシーであっても内面の強さは十分見て取れる。
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はっきりと聞いたわけではないが、年の頃は30代後半から40代前半。もう派手な恋愛をする歳でもないのかも知れないが、その魅力はまったく色あせることもなく見るものの心をときめかせる。いや年齢相応の落ち着きと漂う気品が加わり、色あせるどころか若い頃には無かった魅力が開花し、さらに磨きがかかった言うべきかも知れない。



BMW R60/2は1960年から1969年までに17000台あまり製造された機種です。R50と並び旧タイプの代表で、側車を引かせるように設計されています。その後発表された旧タイプ最後のR69Sは馬力、高速性能とも最高の一台ではありますが、速度重視の設計で側車を引かせるのはトルク重視型のR60のほうが合っているようです。最高出力30Hpは5800回転で発生します(そのうちに側車を引かせたいと考えています)。

日田のNモータースで3ヶ月かけてフルレストアしました。見ての通りエンジンブロックはビーズブラストし、交換出来る部品は出来るだけ新品にしました。すべて再塗装し、子持ちストライプも手書きで入れています。また電装を12V(オリジナルは6V)に変更し、リムはアルミに交換しています。エンジンはすべてオーバーホールし、ピストンなども新品に交換です。だから今からが慣らし運転となります。
オリジナルにこだわる人にはダメかも知れませんが、こうして新車のような姿に生まれ変わった姿もまた美しいものです。
十分に整備されたエンジンはほとんどキック一発でジェントルな音を奏でます。R26とまた違ってOHV水平対向2気筒の低く唸るような音はまた素敵です。

エンジン始動に特別な儀式は必要ありません。メインキーを押し込んだら二つのティクラーをちょんと押し、スロットルを微開でキックペダルを思い切り踏み込むだけです。機嫌が良ければ一発で300ccのシリンダー二つが目覚めます。スロットルを開けるとシャフトドライブ特有の右へ傾く挙動が見られます。
サドルタイプのシングルシートに跨ると170cmの私で足つきは余裕。200キロの重量でも不安はありません。やや重いクラッチを切り、左足でギアをローに入れると出発です。走り出すとR26にはないトルク感に驚きます。200キロの車体を楽々と走らせます。もちろん今どきのバイクのスイスイという感じではなく、いかにも重量感溢れる重厚な走りです。新幹線と蒸気機関車の違いのようです。
前後のドラムブレーキはそこそこの効きでディスクのそれに比較すると車体重量と相まって制動力の不足は否めません。
まあ、そう急いで走る訳でもありません。車間距離は十分取りましょう。

ウインカー、ヘッドライト、ホーンも12ボルト電装のおかげでまったく不安なく使用できます。マグラのグリップは細めで握りやすく疲れません。足下ではつま先のすぐ上にBINGのキャブレターが位置します。上から見ると両側に張り出した一対のシリンダーが目立ちますが微妙にずれた配置に風情も感じます。

pen.JPG書く道具

knife.JPGcity surviver

momo.jpegヘルメット

bulb.JPG真空管

L1.JPGカメラ

gun.JPG殺戮

r26-2.jpg散歩バイク

luminox.jpg暗闇のミッション

bacarat3.JPGショットグラス

mz_P38_l.jpgドイツ製

img10614607096.jpegMEISTER

bmw12.jpgBMW